能と狂言
能は平安時代に中国から伝わった猿楽と農村芸能から生まれた田楽が融合しつつ進化し、世阿弥・観阿弥父子による観世流創設で芸能として完成させました。 能と狂言は一卵性双生児と言われるように、狂言は能と能の間に演じられました。
能が荘重で貴族的歌舞劇に対して、かたや狂言は滑稽で庶民的な対話劇で、見て判り易く笑いの芸術です。
能面
一般的に無表情な顔の譬えに「能面のような」と言われますが、すぐれた能面は演者よって喜怒哀楽の感情が表現されるように工夫されています。
また能面は600年前を忠実に再現するため決められた型紙によって作られ、全制作工程を一人でこなすため能面師の個性や熟練度で味わいに大きな差が生じる奥深いものです。
能は仮面劇ですが、すべての役が面を掛けるのではなく神・鬼・幽霊・精・神仙などの人間以外と老体・女体に用いられます。 能面の種類には変わり型もありますが、基本的な類型として60種類ほどが使われています。
狂言面
能の仮面劇に対して狂言は直面(ひためん)劇と言われ、当時の現代劇であり素顔の役者による表情の妙で表現しました。
狂言面は神仏・亡霊・鬼・閻魔・動物・植物の精と老人・老尼・醜女という役に限られ、どれもユーモラスな味わいがあります。 狂言面の種類は基本的なもので20種類ほどあります。